島田荘司推理小説賞終了についてのあれこれ

8月25日にフェイスブックに投下された以下の投稿を発端として、ちょっとした大騒ぎになっています。
www.facebook.com
これを尖端出版が下りたから賞が続けられない、と読んだ華人が多くいらっしゃったようで、
(中文訳でもやたらと先端出版を強調してますしね)
尖端出版が以下のような声明を出しました。


すごくざっくりまとめると、賞の存続に関わるようなところに関わってないぞ!うちは!というもの。

ただ、これを見ただけだと中国語が読めても何が起きているのかさっぱりわからないと思います。
ですので、判明している限りの周辺情報を紹介します。

まず、島田荘司賞の概略から。
4回までは日本語のWikipediaを参照するのが早い。
島田荘司推理小説賞 - Wikipedia
多国籍で船出し、台湾の出版社が主催した、華文推理小説の賞というところを把握していただければ概ねOK。
最終選考を島田荘司さん自ら読んで行う、というのも特徴かも。
1〜3回は皇冠文化出版、4〜7回は金車教育基金が主催。
7回までの台湾での受賞作品の出版は皇冠文化出版が行っています。
www.crown.com.tw
ちなみに、日本側は一貫して文藝春秋が担当しています。

8回で主催に大きな転換があり、台湾の推理作家協会とも言える台灣犯罪作家聯會が主催することとなりました。
募集要項は以下のリンク先の通り(中文)。
https://news.idea-show.com/post/%e7%ac%ac%e5%85%ab%e5%b1%86%e5%b3%b6%e7%94%b0%e8%8e%8a%e5%8f%b8%e7%8d%8e/
この回は漫画の応募もOKとなっています。
ここで本件の中心とも言える尖端出版の名前が共催として出てきます。
この回は、22年まるまるかけて募集され、23年に結果発表でした。
この回の受賞作を台湾で書籍として刊行したのは、これまで携わってきた皇冠ではなく、共催していた尖端出版でした。
www.spp.com.tw
皇冠はそもそも共催すらしていないので当然と言えば当然ですね。

そして、募集中止となった第9回。
募集要項は以下リンクのとおり(中文)。大本はすでに削除されており、アーカイブですが。
https://web.archive.org/web/20240526211349/https://www.the-cwt.com/ss9-rules
募集期間は24/5/8から12/31の正午まで。たぶん台湾時間なので日本時間にすると午前11時まで、かな?
主催は引き続き台灣犯罪作家聯會、そして台湾角川も。
体制が大きく変わった結果、投稿方法も変更となりました。
台湾版カクヨムとも言える、角角者への投稿です。
www.kadokado.com.tw
先日東京創元社カクヨムで行った、学園ミステリ大賞の方式のようなもの、と思っていただければはなしは早い。
このまま実施されていれば今回のような騒動は起きなかったのですが、コトが起きたのは募集開始から1ヶ月が経った6月11日。
以下のような声明が台灣犯罪作家聯會から投稿されました。
www.the-cwt.com
共同主催の台湾角川とともに、主催から下りる、という声明です。
賞に投稿された方は文藝春秋公式からの後継の(賞の)主催権についての情報をお待ち下さい、とも書かれているのですよ。

1年以上経ってなんの音沙汰もなく、ソワソワしていたところにほぼ公式とも言える島田荘司さんから来た情報が本稿冒頭のメッセージだ、と。
真っ直ぐに日本語のメッセージを読めば、下りた尖端出版の後継をしてくれそうな出版社が連絡くれなくて、
ケツ持ってくれるとこがないから作家協会に迷惑もかかるんで中断とした、ととれます。
中断の判断をしたのは島田荘司さん側で、
尖端出版ではない名前の出ていないどこかの台湾の出版社が連絡を密にしてくれないからとしか日本語からは解釈できないのですが、
メッセージの中文訳が悪かったのか、たまたま明確に名前が出てたとこが叩きやすいから叩いた、ように部外者からは見えます。
(共同主催をしていた出版社である台湾角川じゃね?と思うのが普通とも思います 日本語版版権は文藝春秋側が持つことになるでしょうし)

とはいえ、中断時の声明に記載のある通り、文藝春秋社は可及的速やかにこの件について何らかの声明を出さなきゃいかんのではないかな、とは思いました。

ケン・リュウの中国SF英訳作品リスト(2012年分)

先日に引き続き、2012年分。
11年分と違い、初出の確認できない作品ができてしまいました。
調査ができ次第追記の予定ではありますが、いつになるかは、神のみぞ知る。
作家の略歴等の紹介は、邦訳のない人を優先します。追記は少々お待ちください。

1.夏笳《百鬼夜行街》(夏笳「百鬼夜行街」)
・英訳タイトルと初出:“A Hundred Ghosts Parade Tonight” ,Clarkesworld, February 2012
・原文の初出:「科幻世界」2010年第8期
・『关妖精的瓶子』(四川科学技术出版社,2012)所収
2.刘慈欣《赡养上帝》(劉慈欣「神を養う」)
・英訳タイトルと初出:“Taking Care of God” ,Pathlight, April 2012.
・原文の初出:「科幻世界」2005年第11期
3.陈楸帆《沙嘴之花》(スタンリー・チェン「砂嘴(さし)の花」)
・英訳タイトルと初出:“The Fish of Lijiang” , Interzone, October 2012.
・原文の初出:「少数派报告」2012年6月
4.邓一光《深圳在北纬22°27′-22°52′》(鄧一光「深圳—北緯22度27分〜22度52分」)
・英訳タイトルと初出:“Shenzhen is Located at 22°27’-22°52’ N” ,Pathlight, Winter 2012.
・原文の初出:2011年発表、初出誌不明
5.薛忆沩《出租车司机》(薛憶潙「タクシードライバー」)
・英訳タイトルと初出:“The Taxi Driver” , Pathlight, Winter 2012.
・原文の初出:初出誌不明

この年いちばんはじめに翻訳された「百鬼夜行街」の夏笳は、1984年西安生まれ。本名は王瑶。
北京大学物理学部大気科学科卒。美人過ぎるSF作家*1、とか(ハードSFと対置する意味での)ソフトSF作家、茄子と呼ばれていたりします。

*1:ググれば写真は出てきますので、判断は個々にお任せします

ケン・リュウの中国SF英訳作品リスト(2011年分)

科幻世界掲載の翻訳作品リストの展開が途中ですが、
こちらのほうが求められているのではないか、と言うことで先行して。
ケン・リュウ公式サイトの記述を基本とし、
作品原文の初出データと単行本化されていることがわかっている場合はそのデータも添えています。
邦題に関しては基本的に原題の直訳となっています。邦訳がある場合はそちらで記載予定(該当は「鼠年」くらい?)。
該当作を読んだらあらすじを追加するかもしれません。

1.陈楸帆 「丽江的鱼儿们」(スタンリー・チェン「麗江の魚たち 」)
  ・英訳タイトルと初出:“The Fish of Lijiang” ,Clarkesworld, August 2011
  ・原文の初出:「科幻世界」2006年第5期
  ・『薄码("THIN CODE")』(百花文芸出版社,2011)所収
2.马伯庸 《马克吐温机器人》(馬伯庸「マーク・トゥエイン・ロボット」)
  ・英訳タイトルと初出:“Mark Twain Robots”,in TRSF (September 2011), a special publication of MIT’s Technology Review
  ・原文の初出:豆瓣网,2011/02/03
3.马伯庸 《寂静之城》(馬伯庸「静寂の町」)
  ・英訳タイトルと初出:“The City of Silence”,World SF Blog, November-December 2011.
  ・原文の初出:「科幻世界」2005年第5期